STEP2:学習の準備
選んだ言語に応じたPC選びから開発環境構築まで、プログラミング学習に必要な準備を完全ガイド
PCの選び方
学習をスタートするにあたり、次なるステップは、アイデアを形にするための重要なツールとなる「パソコン」の選定です。
しかし、多種多様なモデルの中から最適な一台を選ぶのは、決して簡単なことではありません。
ここでは、学習の目的、つまり「何を作りたいか」を基軸に、プログラミングに最適なパソコンを選ぶための指針をご紹介します。
ステップ1:最初の分岐点「Mac」か「Windows」か
パソコン選びは、まずOS(オペレーティングシステム)の選択から始まります。これは、作りたいものによってほぼ自動的に決まります。
iPhone/iPadアプリ開発 → Macが必須
Apple社の製品(iPhone, iPad)向けのアプリを開発する場合、専用の開発ツール(Xcode)やプログラミング言語(Swift)を使用する必要があり、これらはMacでしか動作しません。
そのため、この目的をお持ちの場合は、選択肢はMac(MacBookシリーズなど)一択となります。
上記以外 → Windowsが一般的
Webサイト制作、ゲーム開発、業務効率化ツールの作成、Androidアプリ開発など、iPhoneアプリ開発以外のほとんどの用途では、Windowsパソコンで対応可能です。
Windowsは様々なメーカーから、価格帯やデザイン、性能の異なる多様なモデルが発売されており、予算や好みに合わせて最適な一台を選びやすいという利点があります。
ステップ2:目的別に見る推奨スペック
OSの方向性が決まったら、次にパソコンの性能、いわゆる「スペック」を検討します。これも「何を作りたいか」によって必要なパワーが大きく異なります。
ケース1:Webサイト制作・簡単なプログラミング
想定される言語: HTML/CSS, JavaScript, Python(基本的な処理)
推奨スペックの目安:
- メモリ (RAM): 最低でも8GBを推奨します。複数のタブやツールを同時に開くことを考えると、16GBあるとより快適に動作します。
- ストレージ (SSD): 256GB以上を推奨します。起動や読み込みが高速なSSDは、学習の効率を大きく向上させます。
ケース2:ゲーム開発・Androidアプリ開発・データ分析
想定される言語: C#, Unity, Python(専門的なライブラリ使用), Kotlin, Unreal Engine
推奨スペックの目安:
- メモリ (RAM): 16GBを標準と考えましょう。3Dゲームなど、より高度な開発を目指すなら32GBあると安心です。
- ストレージ (SSD): 512GB以上を推奨。開発ツールや素材データは容量を多く消費するため、余裕を持たせましょう。
- グラフィックボード (GPU): 3Dグラフィックスを扱うゲーム開発では、描画性能を左右するGPUが重要になります。NVIDIA社の「GeForce」シリーズなどが搭載されたモデルを選ぶと、開発の幅が大きく広がります。
ケース3:iPhone/iPadアプリ開発(Macの場合)
想定される言語: Swift
推奨スペックの目安:
- メモリ (RAM): 8GBでも開発は可能ですが、アプリの動作確認(シミュレータ)などを快適に行うために16GBを強く推奨します。
- ストレージ (SSD): 512GB以上あると、OSのアップデートや複数の開発ツールをインストールしても容量に余裕が持てます。
- CPU(頭脳): 現在のApple製Macに搭載されている「Apple Mシリーズ」チップは非常に高性能なため、どのモデルを選んでも安心して開発に取り組めます。
目的別推奨スペック
| 開発の目的 | OSの選択 | メモリ(RAM) | ストレージ(SSD) | グラボ(GPU) |
|---|---|---|---|---|
| Webサイト・簡単ツール | Windows or Mac | 8GB以上 | 256GB以上 | 不要 |
| iPhone/iPadアプリ | Macが現実的な選択肢 | 16GB推奨 | 512GB推奨 | 不要 |
| ゲーム開発 | Windows推奨 | 16GB以上 | 512GB以上 | 推奨 |
| Androidアプリ | Windows or Mac | 16GB推奨 | 512GB推奨 | 不要 |
開発環境の選び方
プログラミング言語という「言葉」を学んだら、次はそれを快適に使いこなすための「道具箱」、つまり開発環境(エディタ/IDE)を選びましょう。
開発環境は、プログラムを書くだけでなく、コードの間違いをチェックしたり、実行を手助けしたりする高機能な作業スペースです。ここでは、主要な選択肢を提示し、「作りたいもの」に応じた最適な組み合わせを提案します。
まずは知っておきたい!開発環境の主要な選択肢
現在、開発環境には大きく分けて3つの主流な選択肢があります。それぞれの特徴を理解し、自分に合ったものを見つけましょう。
1. Visual Studio Code (VS Code): 圧倒的な人気を誇る、万能型エディタ
現代の開発における「標準装備」とも言える存在です。軽量で動作が速く、MacでもWindowsでも同じように使えます。「拡張機能(プラグイン)」を追加することで、あらゆる言語に対応できるのが最大の特徴。迷ったら、まずはここから始めるのが最も確実な選択です。
2. Visual Studio: Windows開発とゲーム開発の重量級ツール
Microsoftが開発する、必要な機能がすべて詰まった「統合開発環境(IDE)」です。特に、Unityを使ったC#でのゲーム開発や、Windowsアプリ開発においては、今でも最も標準的な選択肢です。無料のCommunity版も提供されています。
3. JetBrains社製IDE: 各言語に特化した統合開発環境
JetBrains社は、各プログラミング言語に特化した統合開発環境を数多く提供しています。VS Code に比べると動作は少し重いですが、その言語を書く上での強力なサポート機能が満載です。多くの製品は無料版も提供されています。
- • Rider: C# (Unity) 開発用
- • PyCharm: Python 開発用
- • WebStorm: Web (JavaScript) 開発用 など
- • 他にも、GoLand: Go 開発用、PhpStorm: PHP 開発用 など多くの言語に対応したIDEがあります。
「作りたいもの」から選ぶ組み合わせ
次に、あなたの目的に合わせた具体的な「エディタ」と「主要プラグイン」の組み合わせを見ていきましょう。
A) フロントエンド開発(Web UI・ユーザーインターフェース)
対象技術: HTML/CSS, JavaScript, TypeScript, React, Vue.js, Angular など
選択肢①: Visual Studio Code (VS Code)
フロントエンド開発では圧倒的に人気が高く、豊富な拡張機能とコミュニティサポートが魅力です。
基本的な拡張機能:
- •
Japanese Language Pack: メニューの日本語化 - •
Live Server: リアルタイムプレビュー機能 - •
Auto Rename Tag: HTMLタグの自動リネーム
選択肢②: JetBrains WebStorm
React、Vue.js、TypeScriptなどのモダンフロントエンド開発に特化した統合開発環境です。高度なリファクタリング機能や組み込みのデバッガーが特徴です。
B) バックエンド開発(サーバーサイド・API開発)
対象技術: Python, Java, C#, Ruby, Go, Node.js, PHP, Kotlin など
選択肢①: Visual Studio Code (VS Code)
どの言語にも対応でき、軽量で拡張性が高いのが特徴です。
言語別の主要拡張機能:
- •
Python: Python開発の基本機能 - •
Extension Pack for Java: Java開発環境 - •
C#: .NET開発サポート - •
Go: Go言語開発環境
選択肢②: JetBrains IDE シリーズ
各言語に最適化された強力な開発環境です。
- • PyCharm: Python専用(Django、Flaskなどのフレームワーク対応)
- • IntelliJ IDEA: Java、Kotlin専用
- • Rider: C#、.NET専用
- • GoLand: Go言語専用
C) 機械学習・データ分析
対象技術: Python (pandas, scikit-learn, TensorFlow, PyTorch), R, Jupyter Notebook など
選択肢①(クラウド型・推奨): Google Colab
ブラウザで動作し、GPUも無料で使える最も手軽な選択肢です。環境構築不要で、すぐに機械学習を始められます。
選択肢②(ローカル環境): VS Code + Jupyter拡張機能
ローカルで本格的な開発を行いたい場合の選択肢です。
必要な拡張機能:
- •
Python: Python開発環境 - •
Jupyter: Jupyter Notebook統合 - •
Python Docstring Generator: ドキュメント作成支援
選択肢③(データサイエンス特化): PyCharm Professional
データ分析に特化した機能(データフレーム可視化、統計分析ツールなど)が充実しています。学生版は無料で利用可能です。
D) ゲーム開発(Unity・Unreal Engine)
対象技術: Unity (C#), Unreal Engine (C++, Blueprint), ゲームデザイン
選択肢①: Visual Studio
UnityやUnreal EngineをWindowsにインストールする際の標準的な組み合わせです。両エンジンとの連携がスムーズで、安定した開発が可能です。特にUnreal EngineのC++開発では非常に強力なサポートを提供します。
選択肢②: JetBrains Rider
多くのプロ開発者から支持されているツールです。Visual Studioに比べて動作が軽快で、UnityやUnreal Engineに特化した便利な機能が多く搭載されています。MacとWindowsの両方で使用可能です。
ゲームエンジン別の特徴:
- • Unity: 2D・3D両対応、C#によるスクリプト、学習リソースが豊富
- • Unreal Engine: 高品質な3Dグラフィックス、C++とBlueprintによる開発、AAA級ゲーム制作に適している
E) iPhone/iPadアプリを作りたい
必須ツール: Xcode
iPhone/iPadアプリ開発において、Xcodeは必須のツールです。Appleが提供する統合開発環境で、Swiftプログラミング、UI設計、シミュレータでのテスト、App Storeへの申請まで、すべてがこの一つのツールで完結します。
Xcodeの主な機能:
- • Swift/Objective-C 対応のコードエディタ
- • Interface Builder: ドラッグ&ドロップでUI設計
- • iOS/iPadOS シミュレータ: 実機なしでアプリのテストが可能
- • デバッグツール: アプリの問題を効率的に発見・修正
- • App Store Connect 統合: アプリの申請・配布が簡単
補完的な選択肢: Visual Studio Code + 拡張機能
Xcodeでの開発が基本ですが、コードエディタとしてVS Codeを併用する開発者もいます。ただし、UI設計やアプリのビルド・テストには結局Xcodeが必要になります。
AIの力を借りよう!コーディングアシスタント機能
最近では、AIがプログラミングを手伝ってくれる「AIコーディングアシスタント」が急速に普及しています。これらは特定のエディタそのものではなく、エディタに追加できる「賢い助手」のような機能です。
GitHub Copilot (ギットハブ・コパイロット)
最も有名で強力なAIアシスタントです。VS Code, Visual Studio, JetBrains IDEsのすべてに追加(インストール)して使えます。「こういう機能を作りたい」とコメントで書くだけでコードを提案してくれたり、コードの続きを自動で書いてくれたりします。
※有料ですが、学生は無料で利用できる制度があります
Cursor (カーソル)
これは独立したツールですが、実体は「VS Codeに、AIアシスタント機能(GitHub Copilotに似たもの)を最初から内蔵したエディタ」です。AIとの対話を中心にプログラミングを進めたい場合に、設定いらずで始められる手軽な選択肢です。
💡 ヒント: AIは、学習の速度を上げ、面倒な作業を減らしてくれる強力な味方です。まずはエディタに慣れてから、これらのAI機能を追加してみるのも良いでしょう。